本格焼酎健康読本
これは焼酎のちょっといい話
■ まずは、「ふたつの焼酎」の話。
焼酎はアルコール含有物を蒸留して得られるお酒。酒税法上では、次のように蒸留のしかたによって甲類、乙類のふたつに分類されている。
《甲類焼酎》蒸留を何度も繰り返して不純物を取り除き、得られた高濃度のアルコール(純エタノール)を36度未満になるまで水でうすめる。
《乙類焼酎》熟成もろみを単式蒸留したもの。アルコール以外の揮発成分(原料残留物)を含む。
あまり焼酎に詳しくない人には、甲と乙の名称が等級の違いのように聞こえるが、本当はそうではない。乙類焼酎は、自然醸造のやわらかさと豊富な原料の風味を兼ね備えている。そう、本格派の焼酎なのだ。さて、この本格焼酎で、もし長生きできるとしたら?「酒=害」が通念のこの世の中、そんなはずはないと疑うかたが多いだろう。ところが最近、うそみたいな「焼酎で健康」説が、にわかに巷を騒がせている。その真相に迫ってみることにしよう。
■ 体中をかけめぐる血液で起こっていること。
私たちの血液の中では、血液を固まらせる「凝固因子」と、固まった血液を溶かす「線溶因子」とがあって、双方がバランスを保ちながら働いている。凝固因子は、例えばケガをして出血したとき、すみやかに血液を固めて出血を止める。しかし、凝固因子が働きすぎると、血栓という血の塊ができて、それが心臓や脳の血管をつまらせ、心筋こうそく・脳こうそくをひきおこしてしまう。そうならないために今度は線溶因子が働いて血栓を溶かす、というしくみになっている。この相互作用が血液の正常な循環をサポートしているのだ。
しかし、年をとると、凝固因子と線溶因子のバランスがくずれ、線溶因子が弱くなってくる。中高年に血栓性疾患が多く見られるのはこのためなのだ。では、血液を固まりにくくさせる食品はないのか。この疑問に答えるように、元宮崎医科大学副学長の三原恒氏と倉敷芸術科学大学の須見洋行教授が共同で、たいへん興味深い研究を行った。
■ なにがなんでも飲ませてみよう。
「欧米では、少し飲む人のほうが、まったく飲まない人よりも血栓性の病気になる確率が低い、という調査報告があります。日本で消費されるアルコールならどうなのか、調べてみたんです。」
焼酎の本場にある宮崎医科大学の学生に、アルコールの量にして30から60ml相当の焼酎を飲ませ、血液から血栓溶解酵素(線溶因子にあたる)を分離して、その量と活性を測定する。三原氏・須見教授は、じつに10年もの歳月をかけて、この実験を行った。飲ませて飲ませて飲ませつづけたのである。そして、長年の努力が実を結び、焼酎を飲んだグループの酵素の活性は、飲まないグループの2倍以上になることがわかった。つまり、焼酎を飲むと、その成分が血栓を溶かし、血管がつまるのを予防してくれる、というわけだ。
こうした作用は焼酎に限らず限らず、各種の酒に存在する。
焼酎が他をさしおいてダントツに強いのだ。さらに、同じ焼酎の中でも、
「いも・そば・むぎなどの乙類焼酎は、特に効果が高かった。逆に、純エタノールに近い甲類焼酎では、活性が低いんです。」とのこと。先に述べたように、甲・乙の違いは蒸留のしかたにあって、乙類(本格)焼酎には微量の揮発成分が含まれている。血栓溶解酵素の活性化は、アルコール(エタノール)そのものよりも、その成分の仕業ではないか、と両氏はにらんだ。
■ 本格焼酎はヒーローだ!!
血管の内皮細胞は、ただ血管の内側を保護しているだけでなく、血栓溶解酵素を分泌する役割も果たしてる。人のへその緒にある血管の内皮細胞を培養し、酒成分を投与して、ウロキナーゼという血栓溶解酵素がどれくらい出るか測定する(表2)。ウロキナーゼの放出量が酒を加えないとき、通常11単位だとして、エタノールを入れると36単位まで増えた。これは、どんな酒もウロキナーゼを増やすということだが、それでも乙類焼酎の58単位という数字には目を見張るものがある。さらに、戸津ルイ焼酎の成分より揮発残部をとりだして同様の実験を行うと、82単位にまで跳ねあがった。須見教授、ということは…
「乙類焼酎特有の、アルコール以外の成分が、心筋こうそく・脳こうそくを防ぐ張本人である、といえます。しかし残念ながら、それが何なのか特定できていません。」
いいえ、ここまでわかっただけでも、焼酎党が泣いて喜ぶことに間違いなし。それにしても、あの本格焼酎の豊かな風味の元が、わたしたちの体に有益な働きをしてくれるとは。いい話、聞いてよかった。